PROJECT 特集

社会課題に光を当てるジュエリーブランド「KOHKOH」
キャステムは、真珠養殖の特許技術を用いた未来志向のジュエリーブランド「KOHKOH(コウコウ)」
を立ち上げ、この度オンラインショップを開設しました。
《KOHKOH ONLINESHOP》

KOHKOHが重視しているのは、環境に配慮したサステナブルなジュエリー作り
「エシカル」や「SDGs」の意識が世の中に浸透する中、
真珠づくりの過程で大量に廃棄されてしまう「母貝」を加工し、ジュエリーに生まれ変わらせています

さらにキャステムが持つ3Ⅾ造形技術を活用し、
「真珠は丸い」という固定観念を覆す自由な形状の真珠養殖に成功。
2021年に特許技術を取得しました。

金属部品の加工技術を生かした新たなアートジュエリーの創作に挑み、
次々と新作を発表しています。

2024年には東京・青山で開催された国内最大規模のデザイナーズジュエリーイベント「New Jewelry TOKYO 2024」では、べストジュエリー賞・オーディエンス賞をW受賞する快挙を成し遂げました。
国際的に活躍するジュエリーアーティスト小嶋崇嗣顧問が総合プロデュースを担う当ブランド。

ブランドに込めた思いや今後の展望についてインタビューしました。

■「KOHKOH」に込めた思い

KOHKOHというブランド名は、真珠が「煌々」と光る様子から着想を得たものです。

「光について考える(光考)」というブランドコンセプトも掲げており、
新たな技術や素材を活用しながら社会課題に光を当て、解決の糸口を提案していく姿勢を表しています。

大量廃棄されてしまう真珠の母貝のリサイクルも、社会課題の解決に向けた一歩。
2018年から独自の真珠養殖を始める中で私自身も気づいたのですが、真珠を作る工程で母貝や真珠自体の廃棄が非常に多く、養殖に失敗して廃棄するケースも多い。

近年、アパレル業界でもファーやレザーを使うことがタブー視されているにも関わらず、生き物である真珠を犠牲にすることに誰も何も問題提起しないことに疑問を感じていました。
自分たちが手がけるジュエリーで発信することで問題提起したい―。
そう考え、ブランドを立ち上げました。

■3Ⅾプリント核に真珠層を形成させる特許技術を取得

KOHKOHでは、真珠形成の技術に2年以上を費やし、自由な形状の真珠養殖に成功しました。

高精度3Ⅾプリンターを使って文字、図形など、さまざまな形状の核を造形。
核を母貝に挿核し、海に戻します。半年かけて核の周囲に真珠層を巻いていきます。


KOHKOHでは、特許技術を生かした唯一無二のジュエリー創作に取り組んでいます。
ブランドの顔の一つになっている《Light》 シリーズは、宝石を一つ一つCTスキャンし、石と同じ大きさの核を造形。そこに真珠層を巻かせ、真珠と宝石とぴったり組み合わせた作品です。

インパクトのある見た目で、海外のお客様にも大変ご好評をいただいております。
2025年の新作である《Cover》 シリーズ は、宝石をぴったりと覆うサイズに作った真珠を宝石の上にかぶせることで、上から見ると真珠が、横から見ると真珠と宝石が楽しめる全く新しいジュエリーです。

他にもイニシャルやカメオ、半円など多彩な形状の真珠を使ったジュエリーを生み出しています。養殖には半年かかるため、ご興味があるお客様には早めのお問い合わせをお願いしております。

■機械加工で実現する新時代のカメオ

KOHKOHは、マシニング(機械)加工によるジュエリー製作をしています。

ジュエリー業界では通常、研磨は研磨屋、石の加工は石屋さんにお願いするケースが多い中、私たちは石や母貝の切削加工、ブラスト(磨き)も自社で行っています。

貝殻や半貴石に浮き彫りを施す装飾品である「カメオ」も、
こちらの切削加工機で製作しています。
人の手では実現できない0.001mm単位の微細な表現が可能。
彫る力が一定なので、力を入れすぎて割れてしまうリスクが低いのも機械加工のメリットです。
ジュエリーデザインを基にCADで3Ⅾデータを作成し、切削加工に入ります。

母貝は自然素材であるため、形は一つ一つ異なります。
母貝に合わせて加工位置を0.1mm単位で調整し、加工を行っていきます。

薄い母貝を削り出すため、削った表面に貝の裏の部分や汚れが出ていないか、彫りこみすぎて母貝が破れていないか、カメオの形がきれいに出ているかなどを逐一チェックしながら彫っていく必要があります。
真珠層を活かし、わずか0.12mmのレイヤーが見えるように緻密に彫ったカメオも人気の一品。
機械でなめらかに彫る過程で生まれた形状を活かしています。
真珠の白蝶貝を使ったカメオは珍しいのですが、顔や体、動物などの古典的なモチーフを使いながら、精密さと繊細さを併せ持つ現代的なカメオを作っています。

■キャステムの技術を生かした多彩なジュエリー

工業技術を生かしたジュエリーはかなり新鮮。
他のジュエリーブランドが真似したくてもできない、独自資源の強みだと思います。カメオの他にも、キャステムの技術を生かした母貝や多彩なジュエリーをご紹介します。

宝石を収める石座・石枠には金属を使うのが一般的な中、こちらの《Stone Frame》シリーズでは宝石を用いています。クォーツをメインストーンであるブルートパーズの形に合わせて切削し、独自の技術で石留めを施しています。

水晶系は硬度が高いため、少し加工条件を上げるとエッジが欠けてしまうなど加工が難しく、
1個の加工に20時間を要することもあります。素材に応じて最適な工具を検証し、丁寧に削っていきます。
こちらの《Imitation》は、真珠母貝の上に、ひと粒のシルバーボールをあしらったペンダント。
角度によって光の表情が変わり、貝がシルバーを映しこむたび、まるで真珠が浮かんでいるように見えます。
平らで反射しやすい部位の母貝を使用しています。
こちらは、外枠をあえて残したカメオのシリーズ。
カメオは通常外枠を残さないのですが、時計職人のキャステム社員の提案もあり、この形状になりました。

もとの母貝の形を活かしつつ、これまで誰も見たことのないようなジュエリーに仕上がっています。
他にも、母貝をカットした自然な形状や模様を活かしたジュエリーも。
彼がこれまで時計作りで培ってきた加工や装飾の知識が、ジュエリーに転用できる部分も多くありました。
僕がイメージした以上のものができるのが、チームで作る面白さですね。

僕が知らないキャステムの技術や保有する機械もまだまだある。
みなさんと話す中で新たなアイデアやジュエリー創作のヒントももらえているので、どんどん教えてほしいですね。

■ブランドの今後~100年先も大事にされるジュエリーに~

2023年にブランドを立ち上げて以降、社会課題に光を差す「これまでにないジュエリー」を目指し、新たな挑戦を続け数々の新作を世に送り出してきました。
昨年秋には「New Jewelry TOKYO 2024」のべストジュエリー賞・オーディエンス賞をW受賞することができ、SDGsを意識したブランドとしても認知が広がってきたと感じています。

今後はアートギャラリーとコラボし、真珠層を使ったアート作品にも挑もうと思っています。廃棄する真珠や母貝の端材の粉を使ったプロダクトも生み出していきたい。ジュエリー創作、ものづくりで社会課題の解決につなげていきたいと思っています。

KOHKOHでは、現代にしか生まれないジュエリーを重要視しています。
今の3Ⅾ技術や加工機、知識があるからこそ生まれるジュエリーでありながら、100年先も「古くない」、大事にされるジュエリー。

海外展開も見据えつつ、そんな姿を目指していきます。

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8/6~12には伊勢丹新宿店本館への出展を控え、9月にはドイツ・ミュンヘンでのグループ展に出展予定のKOHKOH。
今後の新作や活動にも、ぜひご注目ください!


《オンラインショップ》
KOHKOH ONLINESHOP


《インスタグラム》
KOHKOH


《 JEWELRY JOURNAL小嶋顧問インタビュー記事》

前編
後編

■小嶋崇嗣顧問プロフィール

・FACILE jewelry 主宰
・神戸芸術工科大学 非常勤講師
・日本ジュエリーデザイナー協会理事
・Contemporary Jewellery Symposium Tokyo 代表

父は日本画家、母は工芸家という家に生まれる。
大学時代、昼間は大学で建築を専攻し、夜間は彫金の教室に通い職人から技術を学ぶ。
2005年からジュエリーアーティストとしてのキャリアを積み、2010年京都にアトリエショップを開業。2011年頃から国外でも活動を始める。 現在、作品発表の場は海外が主。近年では現代美術のギャラリーでの展示や現代美術作家とのコラボレーションなど、ジュエリーの枠を超えた活動に力を入れている。 現在オランダ、フランス、スイスの美術館に作品が永久収蔵されている。